旅と日々 2025.11.7公開

三宅唱監督が「夜明けのすべて」「ケイコ 目を澄ませて」に続いて手がける最新作で、脚本も自身が担当。つげ義春の短編漫画「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を土台に、新たな物語として再構成したドラマ作品。主演は「怪しい彼女」「新聞記者」などで知られるシム・ウンギョン。行き詰まりを感じている脚本家が、旅の途中で出会った人びととの交流を通して、自分の人生を見つめ直していく姿を、三宅ならではの静かで繊細な演出で描いていく。

真夏の海辺。じりじりと暑さが照りつける砂浜で、夏男はひとりぼんやりと立ち尽くしている。そこへ、どこか影を宿した女性・渚が現れ、ふたりはほとんど言葉を交わさないまま、海沿いを一緒に歩き始める。翌日も浜辺で顔を合わせたふたりは、台風が近づき豪雨に見舞われるなか、荒れた海へと泳ぎ出していく。一方、とある大学の授業では、つげ義春の漫画を原作に、李が脚本を手がけた一本の映画が上映されている。上映後の質疑応答で、学生から作品の感想を求められた李は、「自分には才能がないと痛感した」と正直に打ち明ける。季節が冬へと変わった頃、李はふとしたきっかけから雪深い山奥に足を運ぶことになり、古びた宿に行き着く。そこで出会った主人・べん造はどこか投げやりで、暖房もろくに効かず、食事もお粗末。その夜、べん造は李を連れ出し、真っ白な雪原の中へと歩き出していく——。

監督
三宅唱

原作
つげ義春

脚本
三宅唱

キャスト
李:シム・ウンギョン
渚:河合優実
夏男:髙田万作
魚沼:佐野史郎
べん造:堤真一

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<劇場情報>
TOHO CINEMAS
AEON CINEMA
ユナイテッド・シネマ


これかなりエモい系の作品って感じ。

監督は「夜明けのすべて」とか「ケイコ 目を澄ませて」で評価高い三宅唱で、
原作はレジェンド漫画家・つげ義春の短編「海辺の叙景」と「ほんやら洞のべんさん」。
そこに三宅監督のセンスがっつり乗っかってるってだけで、だいぶ期待値高め。

主演はシム・ウンギョン。
「新聞記者」とかでもガチ演技派って証明済みなんだけど、
今回はちょっと影のある女を演じてて、その雰囲気がめちゃハマってる。

ストーリーは、まず真夏の海から始まる。
浜辺でひとり佇んでる夏男の前に、どこか訳ありっぽい女・渚が現れて、
ほとんど喋らないのに一緒に海辺を歩き出すんだよね。
翌日もまた会って、台風近づいてて大雨なのに、ふたりで海に入っちゃう流れで、
「この人たち何抱えてるの?」って一気に引き込まれる感じ。

一方で、季節は冬に飛んで、
脚本家の李が雪深い山奥のボロ宿にたどり着く。
宿の主人・べん造はやる気薄めで、暖房も食事もイマイチ。
でも、その適当そうなおっちゃんが、ある夜李を雪原へ連れ出していくところから、
じわじわと李の気持ちや人生観が揺さぶられていく、みたいな流れ。

全体的に、派手な展開とか大きな事件が起こるタイプじゃなくて、
人とのさりげない会話とか、沈黙の時間とか、風景の切り取り方で感情を見せてくる系。
「なんかうまくいかないな」とか「自分に自信ないな」って時に刺さるタイプの作品で、
三宅監督らしい、静かだけどあとから効いてくる余韻がありそうな一本って印象。